管理者の業務 ~ 構造設備の点検と苦情の処理
管理者の業務
管理者は構造設備と遊技機について、風営法が定める技術上の基準を維持するため、構造設備と遊技機の定期点検を行います。
また、営業に関して苦情があったときは、管理者が適切に処理し、その記録を管理しましょう。
構造設備等の点検実施簿
管理者は営業所の構造設備が風営法が定める技術上の基準に適合するよう、定期的に点検を行い、その記録を管理しなければなりません。
遊技機の点検実施簿
管理者は営業所に設置する遊技機が風営法が定める技術上の基準に適合するよう、定期的に点検を行い、その記録を管理しなければなりません。
遊技機の点検実施簿の書式を用意していますので、必要な場合は担当者までお知らせください。
社交飲食店と深夜酒類提供飲食店のどちらを選ぶか 間違えると逮捕罰金
風俗営業か深夜酒類提供飲食店か
スナックやバーを経営している方からよくご相談を受けるのは、「風俗営業(社交飲食店)の許可を取るかどうか」という悩みです。それはズバリ、「接待をするかどうか」によります。
接待をする飲食店は風俗営業の許可を受けなければなりません。風俗営業の許可を受けるには時間(準備を含めると3か月程度か)も費用(20万くらい余計に)もかかりますし、許可後は管理者講習や変更届出、警察の立ち入りへの対応など面倒なことがいろいろありますが、接待をするなら風俗営業許可を取るのが正解です。
風俗営業を選ぶと深夜営業ができなくなる?
よく言われるのは「風俗営業になると夜0時を過ぎての営業ができなくなる」という話ですが、風俗営業の無許可営業で摘発されれば逮捕、罰金、その後5年間にわたって風俗営業の経営に関与できない、という悲惨な結果になります。
もし風俗営業許可を取得して、仮に深夜まで営業していた場合、これは法令で許容されていない時間に営業したという、いわゆる「時間外営業」となりますが、行政処分の基準では、よほど悪質な場合でなければ、いきなり営業停止処分にはなりませんし、逮捕されるということもまずありません。
ならば、「接待とはなにか」がとても重要なテーマとなりますね。
接待とは?
警察庁の風営法解釈運用基準の「接待の定義」をもとに説明します。
接待は「歓楽的な雰囲気をかもしだして客をもてなすこと。」とありますが、これではよくわかりません。
具体的には次の(1)から(4)にあたると接待です。
(1)客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする。
ただし、お酌をしたり水割りを作って速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為、及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。
(2)ショーを見せたり聴かせたりする。
ただし、ホテルのディナーショーのように不特定多数の客に対し、同時に、ショー、歌舞音曲等を見せ、又は聴かせる行為は、接待には当たらない。
(3)客の近くにはべり、その客に対し歌うことを勧奨し、若しくはその客の歌に手拍子をとり、拍手をし、若しくは褒めはやす行為又は客と一緒に歌う。
ただし、客の近くに位置せず、不特定の客に対し歌うことを勧奨し、又は不特定の客の歌に対し拍手をし、若しくは褒めはやす行為、不特定の客からカラオケの準備の依頼を受ける行為又は歌の伴奏のため楽器を演奏する行為等は、接待には当たらない。
(4)客と一緒にダンスをさせる。
但し、ダンスを教授する十分な能力を有する者が、ダンスの技能及び知識を修得させることを目的として客にダンスを教授する行為は、接待には当たらない。
以上が接待の定義です。
自動車と自転車の違いみたいなもの
自動車を運転するには公安委員会の運転免許が必要です。もし無免許運転が発覚したら逮捕罰金ということになりえます。つまり重大な犯罪行為です。
しかし、自転車を運転するための免許制度はありません。法律に基づいて防犯登録を行う義務があい、安全運転をこころがければよいのです。
無免許運転は重罪ですが、防犯登録義務は努力義務です。
風俗営業も同様で、営業を行うにあたっては公安委員会の許可を受ける必要があり、無許可で風俗営業を行うことは、無免許運転を行うことと似たようなことなのです。
一方で、深夜酒類提供飲食店営業は、営業開始前に公安委員会に届出を行う義務がありますが、営業自体は禁止されていないので、許可がなくても営業できるのですが、営業開始10日前までに公安委員会に届け出る義務があるのです。
深夜酒類提供飲食店の営業開始届け出義務違反は罰金刑の対象となりえますし、飲食店営業としての行政処分の対象ともなりえますから、どちらも犯罪であることには変わりませんが、無許可営業の方が、罰則も、実際の取締りの厳しさも圧倒的に強いのが現実です。
本当に接待をしないの?
ですので、これに該当しないように営業して、警察関係の人が店に立ち入っても、接待営業をしているという疑いをもたれない自信があるということなら、風俗営業許可を取らないでもよいでしょう。
ただし、私の経験からの忠告ですが、営業開始当初は接待しないで営業していても、時間が経つうちに忘れてしまって、ある日、警察の摘発を受けてしまったという話を何度も聞きました。
店のオーナーがしばらく目を離したすきに、ママさんが勝手に接待をするようになっていたというケースもよくあります。
逮捕経験がない人は、とかく警察を甘く見る傾向があって、言葉でしつこく説明したくらいではわかってくれないもの。しかし、いま悩んでいるなら、風俗営業許可を取ることをおすすめします。
風俗営業とは 接待飲食店等 社交飲食店・低照度飲食店・区画席飲食店
- 風俗営業とは
- 風俗営業は1号から5号までの5種類があります。
- 風俗営業の第1号
- 飲食・接待・遊興
- 風俗営業1号は接待営業 社交飲食店 キャバレー 料理店
- 風俗営業2号 低照度飲食店
- 風俗営業3号 区画席飲食店
風俗営業とは
風俗営業は「適正に営まれれば国民に憩いを与える営業」とされています。風営法は主に、地域の風俗環境等を保持することを主な目的とする法律ですが、適正に営業されないと風俗環境等に対して有害な影響を与えるおそれがあります。
そこで、適正な営業ができない人を風俗営業から排除するため、営業をしたい人は都道府県公安委員会から営業許可をうけなければなりません。
許可をうけずに風俗営業を行っていることが発覚すると、逮捕罰金刑などの重い処分を受ける可能性が高いです。
風俗営業の無許可営業は「無免許運転」くらいのリスクだと考えておくとよいでしょう。
風俗営業は1号から5号までの5種類があります。
風俗営業の第1号
1号はキヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業(風営法2条1号)
です。
夜の街にたくさんある「キャバクラ」という営業形態が、この風俗営業第1号のなかの「社交飲食店」に該当します。
ここでは 飲食+接待+遊興 という3つの言葉を理解してください。
飲食・接待・遊興
飲食をさせる営業は「飲食店営業」
「飲食」とは、飲み物を飲み食べ物を食べることで、「客に飲食をさせる営業」を「飲食店」と言います。飲食店営業を行うためには保健所から営業許可をうける必要があります。
接待とは
簡単に言うと、従業員が客にお酌や談笑をしたり、従業員が客とカラオケで一緒に歌ったり(デュエット)踊ったりすることです。
接待の定義について風営法では
「歓楽的雰囲気をかもし出す方法により客をもてなすこと」
と言っています。
さらに警察庁解釈運用基準においては具体的に、
<営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して、興趣を添える会話やサービス等を行うこと。言い換えれば、単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為(ほぼ原文)>
とあります。
カウンター越しなら接待にあたらない?
よく「カウンター越しであれば接待にあたらない。」という話を耳にしますが、「カウンター越しかどうか」では判断できないことは、上記の解釈を見ればお分かりいただけると思います。
もちろん、客と従業者とが会話をしただけで、ただちに「接待」にあたるわけではありません。客が「飲食提供」を超えたサービスを期待し、その期待に店側が応えて営業行為としてサービスを提供していれば「接待営業」にあたるのだろうと思います。
接待の線引きはかなり微妙な問題をはらんでいます。
気になる方は、のぞみ合同事務所の風営法担当042-701-3010日野 まで電話でお尋ねください。
遊興
法的な解説は省略し、誤解を恐れず一言でいうと「複数人ではしゃぐこと」です。
「はしゃぐ」は「騒ぐ」に置き換えてもよいでしょう。「客に遊興をさせる」とは「営業者側の積極的な働き掛けにより不特定の客に遊び興じさせる行為」を意味します。
より詳しいことは以下の大阪府警の関係サイトをご覧ください。
ダンス規制から遊興へ
かつて風俗営業の旧3号と旧4号の営業の無許可営業が摘発されることがありましたが、大阪高裁の判決により、これら営業に対する規制に憲法上の問題があることが事実上明らかになったことにより、風営法が改正された結果、「ダンス」を理由とした風俗営業規制が平成28年5月23日を最後に消滅しました。
現在では、客にダンスをさせる行為は「遊興」の一部とされ、風営法改正にともなって新設された「特定遊興飲食店営業」では
夜0時以降営業 + 酒類提供 + 遊興 = 特定遊興飲食店営業
となり、営業を開始するためには公安委員会からの許可が必要となりました。
※ブログ「風営法について思う」 ダンス規制の解釈について思う
風俗営業1号は接待営業 社交飲食店 キャバレー 料理店
風俗営業1号(社交飲食店など)は 「接待」+(「飲食」OR「遊興」) の組み合わせです。
・飲食 + 遊興 = キャバレー
・飲食(洋風の構造) + 接待 = 社交飲食店
・飲食(和風の構造) + 接待 = 料理店
ここで重要なことは、風俗営業1号の営業の問題点は営業時間が原則として夜12時までしか営業できないことです。(※時期と地域により午前1時まで営業できる場合あり)
風俗営業1号<社交飲食店等>の<構造及び設備の技術上の基準>
一 客室の床面積は、和風の客室に係るものにあつては一室の床面積を九・五平方メートル以上とし、その他のものにあつては一室の床面積を十六・五平方メートル以上とすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない。
二 客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
三 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
四 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
五 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
六 第三十条に定めるところにより計つた営業所内の照度が五ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
七 第三十二条に定めるところにより計つた騒音又は振動の数値が法第十五条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
風俗営業2号 低照度飲食店
<喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(1号に該当する営業として営むものを除く。))>
照度が低い飲食店
例え接待や遊興が行われていなくても、客席の明るさが10ルクス以下の飲食店は風俗営業に該当します。暗い客席でみだらな行為が行われやすいと考えられているからです。
居酒屋やショットバー、喫茶店等でこれに該当しそうな店舗をたまにみかけます。
最近は店舗のありようが多様化し、演出として照度を低くする店舗が増えていますが、深夜12時以降営業できないという点や、照度自体が客観的に計測しににくい、または風営法自体を知らないといった理由で許可をとらない場合が多いのではないかと思います。
風俗営業2号<低照度飲食店>の<構造及び設備の技術上の基準>
一 客室の床面積は、一室の床面積を五平方メートル以上(客に遊興をさせる態様の営業にあつては三十三平方メートル以上)とすること。
二 客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
三 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
四 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
五 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
六 第三十条に定めるところにより計つた営業所内の照度が五ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
七 第三十二条に定めるところにより計つた騒音又は振動の数値が法第十五条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
風俗営業3号 区画席飲食店
<喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの>
客室が区画された飲食店
例え接待や遊興が行われなくても、客席がせまく見通しが悪い飲食店は風俗営業に該当します。このような構造では、みだらな行為が行われやすいと考えられたからです。
全国でごくわずかしか存在しません。最近の店内設備の多様化により、客席が5㎡以下のバーや居酒屋は増えていると思われますが、許可件数は減っています。営業時間等の制限があるので、深夜酒類提供飲食店とし深夜の営業する場合が多いものと推測します。もし2号及び3号営業を意味のある制度にするのであれば、営業時間の制限を緩和する必要があるでしょう。
風俗営業3号<区画席飲食店>の<構造及び設備の技術上の基準>
一 客室の内部が当該営業所の外部から容易に見通すことができないものであること。
二 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと。
三 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
四 第三十条に定めるところにより計つた営業所内の照度が十ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
五 第三十二条に定めるところにより計つた騒音又は振動の数値が法第十五条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
六 令第三条第三項第一号ハに掲げる設備を設けないこと。
深夜酒類提供飲食店営業(スナック・バーなど)を開業するときの風営法の手続き(営業開始届け出)
はじめに
バー、居酒屋など、深夜に主にお酒を提供する飲食店は風営法の規制を受けており、都道府県公安委員会に営業開始の10日前までに届出をしないと営業できません。
深夜酒類提供飲食店とは
深夜酒類提供飲食店営業は深夜0時以降に酒類を提供する飲食店営業です。
「酒類を提供する飲食店」とは、設備を設けて客に飲食させる営業のうち、バー、酒場その他客に酒類を提供して営む営業で、営業の常態として通常主食と認められる食事を提供して営むものを除いた営業のことです。この営業にあたるかどうかのポイントを以下に記載します。
設備とは ~ 屋台等で単に立食をさせる営業は含まれないが、屋台等でも、卓やいす等を設けて客に飲食をさせるものを除く。
客に飲食させるとは ~ 単に調理をして飲食物を販売する仕出屋、弁当屋というを含まない。
他の営業と兼業しているかどうかは問わない。
営業の常態としての解釈について
ア、営業時間中、客に常に主食を提供している店であることを要し、例えば1週間のうち平日のみ主食を提供する店、一日のうち昼間のみ主食を提供している店等は、これに当たらない。
イ、客が飲食している時間のうち大部分の時間は主食を提供していることを要し、例えば大半の時間は酒を飲ませているが、最後に茶漬けを出すような場合はこれにあたらない。
ウ、「通常主食と認められる食事」とは、社会通念上主食と認められる食事をいい、米飯類、パン類(菓子パン類を除く)、めん類、ピザパイ、お好み焼き等がこれにあたる。
酒類を提供して営むとは ~ 酒類(アルコール分1度以上)を客に提供して営むことをいい、提供する酒類の量の多寡を問わない。
深夜酒類提供飲食店営業の風営法規制
営業上の規制に関しては上記の「深夜における飲食店営業」の規制とほぼ同じで、さらに場所の制限と届出義務が課されています。
深夜(0時から日の出まで)に酒類提供飲食店を営業する場合は、営業所ごとに、その営業所を管轄する所轄警察署へ営業開始の届出をしなければなりません。これは昭和34年の法改正で新設された規定です。
深夜における酒類提供が風俗環境へ影響するおそれが大きいことなどを考慮して届出制にしたものと思われます。届出は営業開始10日前までに行います。
営業開始届における提出書類は次のとおりです。
公安委員会に対し開始届け出を行う場合の提出書類
以下は風営法関係法令で明記されたものであり、これら以外の書面の提出を警察から求められる事がよくありますが状況によります。
- 営業開始届出書
- 営業の方法
- 営業所の平面図、求積図
- 照明・音響設備図
- 申請者の住民票(本籍地の記載のあるもの)
- 申請者が法人の場合はさらに定款、登記事項証明書、役員全員の住民票(本籍の記載のあるもの)
- 食品衛生法の許可証の写し(※)
※食品衛生の許可証の写しは法律上の提出義務が明記されていませんが、行政指導として提出を強く求められます。保健所の手続をすみやかに進めて飲食店営業許可証の交付後に深夜酒類提供飲食店営業の営業開始届出をすることになるでしょう。
※手続き上の取扱は地域によって若干異なります。実務上は提出書類や書類の書き方等が全国的に統一されているとは限りませんのでご注意ください。
深夜酒類提供飲食店営業の営業禁止地域
都道府県条例で、この営業をすることができない地域を定めることができます。一般的に住居系の用途地域では営業が制限されています。
※神奈川県条例の場合 ~ 住居専用地域及び住居地域(規則で定める地域を除く)においては、深夜において酒類提供飲食店を営んではならない(16条)
深夜酒類提供飲食店の開業後の変更届出の義務
深夜酒類提供飲食店営業において以下の事項の変更があった場合は10日以内(法人の名称、住所、代表者の氏名の変更であれば20日以内)に変更届出をしなければなりません。
- 氏名及び住所 (法人の場合はその名称及び住所並びに代表者の氏名)
- 営業所の名称
- 営業所の構造及び設備の概要
深夜酒類提供飲食店の廃止届出の義務
営業を廃止した際には、廃止した日から10日以内に廃止届出書を提出してください。
深夜酒類提供飲食店と風俗営業1号(社交飲食店営業)の比較
深夜酒類提供飲食店と風俗営業の社交飲食店を比較して説明することがよくあります。
まず深夜酒類提供飲食店では客の接待ができません。接待をするには社交飲食店等の風俗営業許可が必要なのです。しかし風俗営業にはさまざまの制限があります。
たとえば、風俗営業店は原則として深夜0時以降は営業できませんし、営業所内の構造設備の基準や場所の基準、身分関係の要件など厳しい基準があります。両方の兼業は認められていませんので、どちらかを選択することになります。
兼業をおすすめしない理由
同一の営業所で0時まで1号風俗営業で営業し、0時から深夜酒類提供飲食店を営業するという場合、つまり1号風俗営業許可申請をしつつ深夜酒類提供飲食店の開業届出をするといった方法は、時間外営業等の脱法行為を誘発するおそれがあるので、風俗営業の全ての客と接待従業者を帰らせ別会計にして営業するなどの措置を講じて、営業の継続性を完全に断つ場合に限って認められることがあります。
脱法行為と受け取られやすいので、このような方法での営業は極力さけるように指導される傾向があります。真実に二つの営業を完全分離するのであれば結構ですが、合法を装うためにあえてこのような手続をすることは実益がないのでやめるべきです。
飲食店営業が風営法の規制を受ける場合
飲食店営業の規制
ここでは、夜10時以降に営業する飲食店営業が風営法の規制を受ける場合について解説します。
飲食店営業は設備を設けて客に飲食を提供する営業です。
喫茶店やレストランのように有料で飲み物や食べ物を客に提供するお店のことです。
飲食店営業を開始する前に食品衛生法の営業許可(保健所の)を取得しなければなりません。
さて、飲食店営業の許可を取得したとしましょう。
あなたがこれから行おうとする営業が以下に該当する場合は、さらに風営法の営業規制と手続きの義務が追加されます。
- 深夜(0時から6時)までの時間帯に客に酒類を提供する場合 → 深夜酒類提供飲食店営業
- 客に接待を行う場合 → 風俗営業第1号 キャバレー・社交飲食店・料理店等
- 深夜に酒類を提供し、さらに客に遊興させる場合 → 特定遊興飲食店営業
しかし、カフェやレストラン、ラーメン屋など、上記の項目に該当していない一般的な飲食店であっても、保健所だけでなく、公安委員会、つまり警察の監督下にあります。
法令に違反し、風俗環境を害するおそれのある飲食店に対しては、警察(都道府県公安委員会)が必要な指示や処分をできる規定が風営法に盛り込まれています。
全ての飲食店営業にとって風営法(警察)は無関係ではないのです。
飲食店営業に対する規制等
風営法は、夜10時以降に営業する飲食店に対して規制をかけています。
大手居酒屋チェーンが客引き容疑で摘発された事例もありますので、夜間(夜10時以降の時間帯)に営業する飲食店営業者は風営法の規制をよく理解しておきましょう。
風営法では飲食店について次の行為が禁止されます。
①夜10以降の時間帯に客引き又は客引きを目的として、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、又はつきまとうこと
全ての飲食店は、夜10時から午前6時までの時間帯における客引きと、客引きを目的とした立ちふさがりやつきまといが禁止されています。
②酒類を提供する飲食店が午後10時以降に18歳未満の者を営業所に客として立ち入らせること
ただし、飲食店であっても、次のいずれかの営業の場合には風営法の規制の対象となりません。
- 営業の状態として通常主食と認められる食事を提供する営業
- 「コーヒー、紅茶、ジュース等の飲みものやケーキ、パフェ、アイスクリーム、おしるこ等の菓子類」以外の飲食物(フライドチキン、サラダ、たこ焼き等)を提供する営業で、午後10時以降に酒類を提供しない営業
- 保護者同伴の場合
解説
通常の喫茶店では、夜10時以降に18歳未満の客を入れてはいけないのです。牛丼屋は主食を提供しているので対象外。お好み焼きやピザなどを提供する店も主食なので同様です。ドーナツやアイスクリームを提供する店は規制の対象です。屋台等の場合、立食をさせるだけなら規制対象外ですが、卓またはいすを設ける場合は規制の対象となります。仕出し弁当屋は客に店舗で飲食をさせないので対象外です。居酒屋は酒類を提供するので規制対象ですが、あまり守られていないようです。これらの線引きはあいまいでますが、風俗営業店以外でも18歳未満の立入規制があるのです。この規定が実際にあまり使用されていないために問題となっていないようです。しかし青少年がらみの事件やトラブルに伊勢が関係すれば、この規定が発動されるおそれがないとは言えませんので、飲食店経営者としては知っておいていただきたいです。
なお、青少年の深夜の外出等については都道府県が定める条例によって規制されていることが多いので、各地域の条例についても注意が必要です。神奈川県青少年保護育成条例では、次のようになっています。
(深夜営業を行う施設への立入りの制限等)
第5条の2 次に掲げる施設を経営する者及びその代理人、使用人その他の従業者は、深夜においては、当該営業の施設に青少年を立ち入らせてはならない。
(1) 個室を設けて当該個室において客に専用装置による伴奏音楽に合わせて歌唱を行わせる施設
(2) 設備を設けて客に主に図書類を閲覧させ、若しくは観覧させ、又は客にインターネットの利用により情報を閲覧させる施設(図書館法(昭和25年法律第118号)第2条第1項に規定する図書館を除く。)
2 前項各号に掲げる施設を経営する者は、深夜に当該施設において営業を営む場合は、当該施設の
入口等の見やすい箇所に、深夜における青少年の立入りを禁止する旨を表示しなければならない。
③営業所で未成年者に酒類又はたばこを提供すること
未成年者飲酒禁止法では、未成年者が酒を飲んでしまうことを知っていて酒を提供することが禁止されています。風営法では、未成年者が飲むかどうかに関わりなく、未成年者に酒を渡すことが禁止されています。
対象はすべての飲食店です。レストランがくじ引きの景品としてワインを提供したとき、飲食店許可を持つコンビニが缶ビールを販売したとき、相手が未成年者であれば風営法違反容疑で処罰される可能性があります。
未成年者飲酒禁止法は平成12年に罰則が上げられましたが罰則の最高限度は罰金50万円です。風営法では、同じ行為について1年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。
風営法では年少者に関わる違反について厳しい処罰を想定しています。営業停止の場合の処分基準においては営業停止などの重い処分が相当とされています。
④深夜(午前0時から午前6時まで)営業の飲食店で下記の構造設備基準を満たしていない場合
深夜に営業する飲食店は、酒類提供の有無にかかわりなく、つまり普通のレストランやファーストフード、カラオケボックス、カフェであっても、客室の床面積が9.5㎡以下である場合や、客室内部に高さ100㎝以上のつい立て等が設置されているときは、構造設備維持義務違反という風営法違反となります。
記
一 客室の床面積は、一室の床面積を九・五平方メートル以上とすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない。
二 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。
三 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備(第百二条に規定する営業に係る営業所にあつては、少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を含む。)を設けないこと。
四 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。
五 次条に定めるところにより計つた営業所内の照度が二十ルクス以下とならないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
六 第三十二条に定めるところにより計つた騒音又は振動の数値が法第三十二条第二項において準用する法第十五条の規定に基づく条例で定める数値に満たないように維持されるため必要な構造又は設備を有すること。
飲食店営業と風営法の関係についてはここまでです。